視線が絡んで、熱になる【完結】
柊に声を掛ける前にこちらに顔を向ける。

「上がったのか。朝食はどうする?」
「いえ、大丈夫です」
「飲み物は?コーヒー牛乳なら何個か買ってある」
「…ありがとうございます」

何故コーヒー牛乳かと思ったが、喉が渇いていたこともあり冷蔵庫からあまり見かけないタイプの紙パックのコーヒー牛乳を取り出した。手のひらサイズのそれは学生の頃に確かよく飲んでいたことを今思い出す。
柊と向かい合うようにしてソファに腰かける。
窓際の観葉植物を見ながらコーヒー牛乳を飲んでいると、キスマークのことを思い出して慎重に問う。

「あの…この鎖骨あたりの跡って…何でしょうか?」
「あぁ、印だよ」
「印?」
「そう。他の男除けだ」
「…」

疑問符で脳内が埋め尽くされる頃にはコーヒー牛乳は既に空になっていた。
男除けと言われてもいまいちよくわからなかった。
男など琴葉の周りには柊しかいない。涼は仕事で関わる先輩社員だ。それ以外は特にいない。柊が勘違いしているのかもしれないと思ったが、深く考えることを辞めた。
それよりも今日は“デート”だ。
そのようなことは初めてだった。学生時代の初彼氏である春樹とは思い返すと付き合ってと言われて付き合ったがデートらしきことはしていなかった。
< 105 / 190 >

この作品をシェア

pagetop