視線が絡んで、熱になる【完結】
嫌いな食べ物はないか、和洋中ならどれがいいか、など質問攻めにされる。
柊が選んだのはイタリアンの店だった。
夜は予約必須の人気店らしく、老若男女問わず店内はにぎわっている。
レンガ調の外壁の店内は開放的でテラス席もあるようだ。
琴葉は、顔色を明るくさせながら案内された席へ座る。
「好きなものを頼んでいい」
「はい。不破さんは、何が好きなんですか?」
「俺は…嫌いな食べ物もないが一番これが好きというものもない。酒もワインも飲むし日本酒も飲む」
「そうですか…」
少し残念な気持ちになる。
柊の興味のあるものをもっと知りたいからだ。趣味は何だろう、休日は何をしているのだろう。
これが恋だ。その人の細部まで知りたいという欲求が溢れる。
琴葉はホタテのジェノベーゼを、柊はナスとタコのラグーソースパスタを注文した。その他にマルゲリータピザも注文する。
混みあっていたからか、料理が運ばれてくる時間が遅い。それでもその時間ですら楽しいと思っている自分がいた。
注文したものが運ばれてくる。ちょうど空腹でお腹が音を出したところで、彼に今の音が聞こえていないか心配になった。

「いただきます!」

両手を合わせて食べ始める。柊はそれを見ながら満足気に口角を上げる。
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