視線が絡んで、熱になる【完結】
「気になるものがありましたらお声掛けください」

営業スマイルなのかもしれないが、可愛らしく快活に笑顔を向ける女性店員が羨ましく思った。

「すみません。似合う服を提案していただけますか」
「はい!もちろんです!」

突如、柊が発した言葉によって琴葉は唇を戦慄かせ、後ずさる。
ポニーテールのスタイルの良い女性店員は琴葉に「こちらへ」と言って様々な服を提案する。

「最近入荷したこちらのワンピースもお似合いですよ!ほら!」
「そうですか」
「お似合いです!!あと、こういったタイトなスカートもお似合いですね。ハイウエストなのでスタイルもよく見えます」

間がないほどに、女性店員は姿見の前に立つ琴葉に次から次へと服を合わせる。その間、柊もそれらを見ながら頷いている。どれがいいか、どれが似合うか、わからずに逡巡するが柊が「似合うものとりあえず全部ください」などという映画でしか聞かないような非現実的なワードを放つ。いらないです、という前に女性店員が間髪入れずに「わかりました!」といった。

「不破さん?!ダメですよ、こんなには…」
「俺がすべて支払うから気にするな」
「ええ…」

前回の化粧品と言い、全て柊に支払ってもらうのは申し訳ない。
しかし結局柊がすべて購入した。その後も、他の店舗で靴を購入したり柊の部屋に置くという理由で琴葉専用のマグカップなども購入した。
二時間ほどショッピングをすると既に柊の両手は買い物袋でいっぱいだった。
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