視線が絡んで、熱になる【完結】
大理石のキッチンで新品であろうまな板を置くとそれだけで背筋が伸びる。
包丁なども新品と思われた。柊は料理をしないようだ。

独身男性は皆だいたい、そうなのかもしれない。特に広告代理店は本当に激務だ。来週はフレックスで遅い時間帯に出社して夜に立ちあいの仕事がある。
仕事のことを考えながら腕を捲って水道のレバーを上げて水を出す。

買ってきたトマトなど野菜を洗う。柊に何が食べたいのか聞いたら“何でもいい”というかと思いきや、ハンバーグというのでリクエスト通りに作った。

ひき肉をボール内でこねていると柊が背後から様子を見にくる。

「料理っていうのは手間がかかるな」
「そうですね」

微笑ましい会話に琴葉は穏やかな笑みを作る。
柊の家で手料理を作り、一緒に寝る。今日はデートもした。まるで、恋人のようだ。

好きという感情が暴走してしまわないよう、防波堤を作っているつもりだがそれもいつ壊れてしまうのかわからない。
ダイニングテーブルに料理を並べる。柊もそれらを手伝ってくれた。
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