視線が絡んで、熱になる【完結】
心地よい声で目が覚めた。
それはそれは、気持ちがよくて、ずっとこのままでいたいと思った。

「おい、大丈夫かよ」
「…んん、」

薄っすらと瞼を開けると、琴葉を覗き込む顔と広い天井が徐々に視界に入る。しかし眼鏡をしていないから、ぼやけてよくわからない。しかめっ面で目覚める。
あれ、ここはどこだろう。

そう思ったのも束の間、体を揺らされてむくっと体を起こすと同時に聞いたことのある声がする。

サーっと血の気が引いた。
下着姿の自分と上半身裸の柊が何故か同じベッドにいた。
頭痛がして額に手を当てる。が、そんなことは問題ではなく今のこの状況を必死に考える。

飲み会をしていたことは覚えている。柊が同じ大学かつ学部で何故か自分を知っていたことも覚えている。しかし、過去を忘れるように慣れないアルコールを摂取したことが原因でそれ以降を覚えていない。

「あ、あ、あの…っ」
「はぁ、なんだよ、飲みすぎて動けなくなったお前を介抱したの俺だけど」

不機嫌な声を琴葉へ向ける。
広い寝室はモノが少なくて、黒で統一されている綺麗な部屋だった。
つまり、ここは彼の部屋ということ?
テンパって布団で胸元を隠しながらベッドから落ちてしまう。

「いった…」
「何してんだよ。ほら、眼鏡」

あわあわとする琴葉とは対照的に、冷静な声が届く。
眼鏡をかけられてようやく視界が鮮明になる。

「あ…嘘、」
「何て顔してんだよ」

あからさまに絶望した顔をした琴葉を見て、柊は舌打ちをする。
そのまま琴葉の腕を掴み、立ち上がらせると泣きそうな顔をする琴葉へ顔を近づける。

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