視線が絡んで、熱になる【完結】
琴葉には疑問があった。
それは、例えば今後も柊と一緒にいられるとして…そのたびに体を合わせるのかということだ。
今だって迷っている。持参してきた薄手の水色のパジャマに身を包み、柊がシャワーを浴び終えるのを広いリビングで待っていた。
歯磨きも終えた。髪も乾かしている。ソワソワするのを表面に出さないように寝室へ行く。

(一緒に寝るんだよね?)

キングサイズのベッドでは二人でも広すぎるほどだった。
縁に腰かけて寝室を見渡した。入ってすぐの入り口側の壁に置かれた本棚には難しそうな本が並んでいる。小説もいくつかあるが、どちらかというと専門書だったりビジネス書が多い印象だ。
勝手に見るのは失礼だからベッドの上でじっとそれを見る。
いつの間にか外したコンタクトは一日中つけていると疲れを感じるから、シャワーを浴びる前に眼鏡にしたが自分にはこっちの方がしっくりくると思った。
丸眼鏡を通して本棚を見ていると寝室のドアが開いた。

柊が入ってくると一変して全身の血液が琴葉の体内を駆け巡るのがわかる。
彼はバスローブ姿だった。

「どうした」
「…いえ、あの」
柊は琴葉とは違い、普段通りだ。
「おやすみなさい」
「眠たいのか」
「…まぁ」

もじもじとしながら柊から目を逸らせば、途端彼が足早に琴葉に近づく。
そしてベッドの縁に座る琴葉の目の前に立つと、すっと音もなく顎を掬った。顔を隠していた髪がサラリと元の位置へ戻ると、柊と目が合う。

「抱きたい」

ハッキリとそう言われ、琴葉は返す言葉もなく目を見開く。

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