視線が絡んで、熱になる【完結】
こういう時、皆はどうしているのだろう。
動揺もせずに気を落とさずに普通の顔をして笑っているのだろうか。

「ほら、戻ろう!」
「はい」

自分に喝を入れるように声を張った。
しかし―…。

「何してるんだ」
「あ、マネージャー」

ドスの利いた声がトイレに続く廊下に響き、涼と二人で顔を向けるとそこには柊が立っていた。
腕を組み、会社では絶対に見せないような不機嫌な顔をしている。
苛立った様子で琴葉たちに近づく。

「琴葉ちゃんが具合悪そうだったんで」
「そうなのか。体調が悪いなら無理するな」
「いえ、大丈夫です!」

涼と柊を交互に見て口角を吊り上げる。涼は普段の調子で「そうそう、無理しないでいいんだよ。琴葉ちゃんはもっと甘えないと」と、言って琴葉の頭に手を置き、ポンポンとする。青春映画にでも出てきそうなワンシーンに一瞬あたりの空気が凍ったのは柊の今にも爆発しそうな怒気を孕む視線のせいだった。




< 137 / 190 >

この作品をシェア

pagetop