視線が絡んで、熱になる【完結】
心を落ち着かせるように酸素を取りこみ、トイレを出る。
戻ると三人で楽しそうにお酒を飲んでいた。既に二杯目を注文しているようだが琴葉はこれ以上は飲めないと判断して追加では頼まなかった。
「大丈夫か」
大き目の椅子に腰かけるとすぐに柊が声を掛ける。
「はい、大丈夫です」
「大丈夫そうには見えないけどなぁ、明日もあるしそろそろ解散しましょうか」
涼の配慮で終電前に解散ということになった。
会計は全て柊が支払ってくれたようでお礼を言った。
ビルを出て、それじゃあと涼が発したのを合図に琴葉も頭を下げる。
今日はとにかく何も考えずに眠ってしまいたい。柊との関係を考えれば考えるほど、出口のないトンネルに足を踏み入れてしまったような気分に陥る。
柊の視線を感じつつも、早く帰宅したい琴葉は彼らから背を向けようとする。が、美幸の声でそれが制止する。
「不破さん、よかったら連絡先を…」
控え目だが、猫撫で声で頼み込む美幸に琴葉のこめかみがぴくりと動く。
涼も同様に二人を見ていた。
個人の連絡先は知らなかったようだ。でも現在進行形で距離を縮めようとしている。傍からみたら二人はお似合いだ。見た目もそうだが、纏っている雰囲気も似ている。お互い仕事ができる点も共通している。それを分かっていても尚、この焼きつくような心情を拭い去ることはできない。
「申し訳ないのですが、何かあれば会社用の携帯に連絡をください。個人的な連絡先交換はできません」
「…でも、私は…」
「申し訳ない」
事務的な返しに空気は一気に冷たくなった。
涼も珍しく黒目を二人から逸らして気まずそうな顔を琴葉へ向けてくる。
まるで“気まずいね?”と言いたげだ。
柊がこちらへ向かってくる。
戻ると三人で楽しそうにお酒を飲んでいた。既に二杯目を注文しているようだが琴葉はこれ以上は飲めないと判断して追加では頼まなかった。
「大丈夫か」
大き目の椅子に腰かけるとすぐに柊が声を掛ける。
「はい、大丈夫です」
「大丈夫そうには見えないけどなぁ、明日もあるしそろそろ解散しましょうか」
涼の配慮で終電前に解散ということになった。
会計は全て柊が支払ってくれたようでお礼を言った。
ビルを出て、それじゃあと涼が発したのを合図に琴葉も頭を下げる。
今日はとにかく何も考えずに眠ってしまいたい。柊との関係を考えれば考えるほど、出口のないトンネルに足を踏み入れてしまったような気分に陥る。
柊の視線を感じつつも、早く帰宅したい琴葉は彼らから背を向けようとする。が、美幸の声でそれが制止する。
「不破さん、よかったら連絡先を…」
控え目だが、猫撫で声で頼み込む美幸に琴葉のこめかみがぴくりと動く。
涼も同様に二人を見ていた。
個人の連絡先は知らなかったようだ。でも現在進行形で距離を縮めようとしている。傍からみたら二人はお似合いだ。見た目もそうだが、纏っている雰囲気も似ている。お互い仕事ができる点も共通している。それを分かっていても尚、この焼きつくような心情を拭い去ることはできない。
「申し訳ないのですが、何かあれば会社用の携帯に連絡をください。個人的な連絡先交換はできません」
「…でも、私は…」
「申し訳ない」
事務的な返しに空気は一気に冷たくなった。
涼も珍しく黒目を二人から逸らして気まずそうな顔を琴葉へ向けてくる。
まるで“気まずいね?”と言いたげだ。
柊がこちらへ向かってくる。