視線が絡んで、熱になる【完結】
友人も数人はいたが、同じような地味な子たちと一緒に過ごしていた。彼のような人が自分を知るわけなどない、そうハッキリと思った。

「そんなわけありません。どうして私が、不破さんと接点が…学年も違うしサークルにも入っていませんでした。何かの間違いでは…」
だが、柊は琴葉の推測をあっけなく否定した。
「俺は知ってる。初めてなのか知らないけど、今よりも雰囲気の違う大学生の時のこと。まぁそれも一瞬だったか」
「っ」

眩暈がした。
嘘だ、そう何度も心の中で吐き捨てても琴葉の目の前に立つ柊は顔色一つ変えずに続ける。

「コンタクトにすればいいのに。大学時代の夏休みの時は外してたじゃん。それに、昨日はあんなに素直に啼いてたくせに」

金魚のように口をパクパクとさせ、赤面した顔を隠すことなく琴葉は玄関に向かって走る。
何も言わずに彼の家を出た。琴葉は全く彼のことを知らない。それなのに、どういうわけか柊は黒歴史だった時期の大学生時代のことまで知っている。


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