視線が絡んで、熱になる【完結】
♢♢♢

「昨日はお疲れ。あの後ちゃんと帰れた?」
午後になって出社した涼ににこやかにそう訊かれた琴葉は言葉を濁して首を縦に動かす。
「知らなかったなぁ。まさかもう付き合ってるなんて…」
午後からは理道の担当者と会う。涼が出社してすぐに鞄を肩にかけていく準備をする。
社員証を首にぶら下げながら涼はニヤついてそう言った。

「違いますよ!そういう関係じゃ…」
「え?違うの?」

周りを気にしながらヒソヒソと耳打ちするが、涼は関係なく大きな声で話す。それがわざとなのかわからない。
「まぁまぁ。男女の話に口出しはしないよ。社内恋愛は禁止じゃないしね」
「…だから、それは、」

勝手に決めつけている涼にそれ以上は何も言う気にはなれなくて彼に続くようにしてフロアを出る。
車内でも同様に柊とのことを聞いてくるくせに“決めつけ”ているから何を言っても付き合っていると思っているようだ。

「でもすごいよ、本当に」
「何がですか?」
「不破マネージャーってめちゃくちゃモテるんだよ。独身だからほとんどの女性の噂の的だよ。バレンタインなんて漫画のようにチョコレートもらうし。もちろん義理じゃなくてね。取引先の女性なんてさ、だいたい不破マネージャーと関わると目がハートになるんだよね~同性としてもカッコいいのわかるからさ」
「…そうですか」
「だから凄いよ。簡単に不破マネージャーのこと落としたなんて」
「あの、何度も言いますが…私は不破マネージャーとは何もありません」
「え、付き合ってるんでしょ?だって家に泊まってるんだよね?」
「いや、だから…」

駐車場にちょうど車が停車した。
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