視線が絡んで、熱になる【完結】
智恵は化粧を直しながらつづけた。
何が言いたいのか、話の輪郭を掴めないまま彼女の話を聞く。

「藍沢さん、いえ…琴葉さんは琴葉さんでいいの。もちろん綺麗になる努力をするべきだとは思うけど、あなたはあなたらしくね。自信もって。あ、そうだ」

パチン、とマグネットタイプのパウダーファンデーションのケースが閉まる音が響くと同時に智恵が口角を上げる。

「不破マネージャーとは付き合ってたけど、今は何もないから。未練なんかないし、今は新しい彼氏がいるの」
「っ…」
「ふふ、恋敵になることはないからそこも安心して」

さらっとそう言い残すと、何とも言えないいい香りを残してその場から去っていく。後姿まで綺麗な智恵の言葉を噛み締めるように琴葉は頷いていた。

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