視線が絡んで、熱になる【完結】
「はい、タクシーで」
「そうか。迎えに行こうかと思っていた」
「大丈夫ですよ」

迎えに来てもらったらどんな顔をしていいのかわからない。
柊はこの時間帯には違和感のある私服姿で本当に自分を迎えに来ようとしていたのだと知り好きという気持ちが加速した。

「シャワー浴びてきたらいい。疲れただろう」
「…はい」

既に柊の自宅には琴葉の着替えも、歯ブラシもある。まるで同棲しているように琴葉の私物が増えていく。
振られる覚悟はできていた。でも、それが怖くないかと問われれば嘘になる。
必要以上の会話を避けるように琴葉は浴室へ向かう。
シャワーを浴びながらも刻一刻と迫る別れの時を思うと無意識に涙を溢していた。
幸いにも、シャワーの最中だからお湯と一緒にそれを流してくれる。
シャワーを終えると柊がTシャツ姿でリビングにいた。
お酒を飲んでいるわけでもなく、ノートパソコンを開き何か作業をしていた。
もしかしたら仕事をしているのかもしれない。
琴葉に気づくとすぐにそれを閉じて、立ち上がった。

「琴葉、」
「はい」
「話がある」

きた、と思った。
< 165 / 190 >

この作品をシェア

pagetop