視線が絡んで、熱になる【完結】
涼と一緒にフロアを出る際に一瞬だけ柊と目が合った。ドキッと胸が鳴ると同時に柊が微かに口元に弧を描いたのを見た。

(ドキドキする。会社なのに…)

周りに悟られないようにしながら、琴葉は無意識のうちに社員証を握りしめ踵を鳴らしフロアを出る。
今日の行き先は、シャインだ。
前回は担当者が不在だった。橋野美幸が代わりに打ち合わせに出席し、その後飲み会で柊にアプローチをしていたことを思い出すと複雑な心情だ。

「今日は、ようやく担当者と会えるよ」
「前回は橋野さんでしたね」
「代わりだったからね。担当者は前からずっと同じ人でいい人だよ、若い男性で。あ、不破マネージャーが妬いちゃうかもね~だってイケメンだし。まぁ仕事では私情は挟まない人だけどね」

涼がハンドルを握り、アクセルを踏む。
涼が言ったように、柊は仕事では私情は挟まない男だろう。だから橋野美幸にもあのような態度を取った。

「今日は橋野さんはいないと思うから安心して」
「わかってます。大丈夫ですよ。橋野さんがいても」
「本当?あれは恋敵になるようなポジションにいるからね~」

涼は琴葉たちの関係を楽しんでいるようにしか見えなかった。彼に気づかれないように息を吐いてシャインに向かう。
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