視線が絡んで、熱になる【完結】
春樹と二人っきりになるなど思ってもいなかった琴葉は顔を強張らせたまま自分もトイレに行こうと立ち上がろうとした。
「私も…―」
が、体勢を崩して机の上に置いてあったノート類を床に落としてしまう。
「すみません!」
すぐにしゃがみ込み、それらを拾う琴葉に春樹が立ち上がり同じようにしゃがむ。
「大丈夫?」
「…っ」
気が付くと、至近距離に春樹の顔があり泣きそうになった。
「びっくりした。まさかこんなところで会うなんて。広告代理店に就職してたんだ」
「…はい」
声が掠れて、震えていた。春樹は昔を思い出すようにして続けた。
「すごく綺麗になってる。びっくりした。最初、わからなかったよ」
距離の近い話し方に床に散らばったノートを拾うのがやっとだった。春樹がボールペンを拾って琴葉に手渡す。
「俺、ずっと後悔してた。謝りたかった。電話してももう着信拒否されていたから話せなかったし、大学でも俺に会わないようにしてたよね。よかったら、また話したい。俺携帯番号変わっているから、これ」
そう言って立ち上がると近くにあったメモ用紙を千切ってそれにスラスラと番号を書いた。
そのまま、琴葉にそれを渡すと真剣な目で言った。
「今週の金曜日、会えないかな」
「…会えません。私は、」
「仕事上でしか会えない?」
「…」
言葉の詰まる琴葉に畳みかけるようにそう訊く春樹は狡いと思った。
わかってはいた。
彼は元カレであると同時に、取引先の社員でもある。断りにくいとわかっていて、彼は提案をしているのだろう。
学生の頃の面影を残したまま、優しく笑う彼はかつて愛した男の顔をしていた。
彼からメモを貰うと同時に涼が戻ってきた。
「あれ?どうかしました?」
琴葉と春樹を交互に見ながら首を傾げる涼に何でもないです、と言い席に戻る。
その後、他愛のない会話をしてシャインを出た。
「私も…―」
が、体勢を崩して机の上に置いてあったノート類を床に落としてしまう。
「すみません!」
すぐにしゃがみ込み、それらを拾う琴葉に春樹が立ち上がり同じようにしゃがむ。
「大丈夫?」
「…っ」
気が付くと、至近距離に春樹の顔があり泣きそうになった。
「びっくりした。まさかこんなところで会うなんて。広告代理店に就職してたんだ」
「…はい」
声が掠れて、震えていた。春樹は昔を思い出すようにして続けた。
「すごく綺麗になってる。びっくりした。最初、わからなかったよ」
距離の近い話し方に床に散らばったノートを拾うのがやっとだった。春樹がボールペンを拾って琴葉に手渡す。
「俺、ずっと後悔してた。謝りたかった。電話してももう着信拒否されていたから話せなかったし、大学でも俺に会わないようにしてたよね。よかったら、また話したい。俺携帯番号変わっているから、これ」
そう言って立ち上がると近くにあったメモ用紙を千切ってそれにスラスラと番号を書いた。
そのまま、琴葉にそれを渡すと真剣な目で言った。
「今週の金曜日、会えないかな」
「…会えません。私は、」
「仕事上でしか会えない?」
「…」
言葉の詰まる琴葉に畳みかけるようにそう訊く春樹は狡いと思った。
わかってはいた。
彼は元カレであると同時に、取引先の社員でもある。断りにくいとわかっていて、彼は提案をしているのだろう。
学生の頃の面影を残したまま、優しく笑う彼はかつて愛した男の顔をしていた。
彼からメモを貰うと同時に涼が戻ってきた。
「あれ?どうかしました?」
琴葉と春樹を交互に見ながら首を傾げる涼に何でもないです、と言い席に戻る。
その後、他愛のない会話をしてシャインを出た。