視線が絡んで、熱になる【完結】
車に戻るとすぐに涼が口を開いた。

「風野さんって元彼?」
「そうです」

やはり、涼にはわかっていたようだ。

「なんだ~風野さん元カレだったんだ!とてもいい人だよ。学生の頃に付き合ってたんだ?」
「そうですね。本当に少しだけですけど」
「へぇ、そうなんだ。なんだか元カレと仕事するってやりにくいね。俺が担当してもいいけど、風野さんは琴葉ちゃんがいいみたいなこと言ってたよね?」
「…」
「びっくりしたんじゃない?琴葉ちゃんが綺麗になっていて」
「それはないです。それだけは、ない」
「…そう?」

つい、声を荒げてしまった。
琴葉はぎゅうっと太ももの上で拳を作り、眉根を寄せた。
彼は綺麗になる努力をした自分の姿をみて似合っていないといった。それだけではない。春樹が琴葉と付き合ったのは、サークルの“ノリ”だ。
好きだったのは、自分だけだった。過去を乗り越えることが出来るかもしれないと思っていた。柊のお陰で過去も含めて自分を変えていけると思った。それなのに春樹との再会によってこんなにも簡単に心が乱れている。そんな自分に憤りを覚える。


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