視線が絡んで、熱になる【完結】
♢♢♢

今日は柊の自宅へ泊まる日だ。

今日は柊の帰宅が遅いらしく事前に連絡があった。
意外に連絡などがマメでそのお陰で安心することが出来ている。
夕飯を作りながら、何度もため息を溢していた。
それは、春樹のことだった。金曜日に個人的に会う約束はするべきではないことは理解している。しかし取引先であるわけだし、春樹がどうして再度琴葉に会いたいのかその理由も気になっていた。
電話番号の書かれてあるメモは、まだジャケットのポケットの中にあった。

「ただいま」
「おかえりなさい」

柊が帰宅した。社内での仏頂面とは反対の優しい笑みが琴葉に注がれる。
「夕飯ちょうどできたところです。食べましょう」
「そうだな」
今日はキーマカレーを作っていた。柊のリクエストだったから作った。
ダイニングテーブルにそれらを並べて着替えてきた柊と一緒に夕食を食べた。
今日のことは彼には内緒にする予定だった。

――…


夕食後、二人ともお風呂も終えて柊がリビングで本を読んでいるのを確認しながら琴葉は寝室へ向かった。
普段よりも疲れているのは、春樹との件があるからだ。
どうしようか、ずっと悩んでいた。
ベッドの縁に腰かけて、そろそろ寝ようかと思っていると寝室のドアが開く。
柊が琴葉に近づく。

「今日は、どうだった?」
「…今日?仕事の話ですよね」
「そうだ」
「あぁ、えっと…大丈夫です。だんだん慣れてきたというか、」
「そうか。俺はお前のことならなんでもわかると自負している」
琴葉の口から小さな声が漏れた。柊が琴葉の隣に腰を下ろす。ふんわり、優しい香りがした。
「今日、様子がおかしかった。今も、だ」
「……」
「何かあるんじゃないのか」
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