視線が絡んで、熱になる【完結】
琴葉は確信していた。
柊はわかっていて聞いている。今日の午前中、シャインに行って元カレに再会したことを彼は知っていると思った。そうでなければ、柊のこのすべてを見透かしたような目が自分に向くはずがないし、こんな質問をしない。

「…ごめんなさい。実は、」

パジャマの裾を握り、ゆっくりと話す。
柊は終始無言だった。黙って琴葉の話を聞く。ようやく話し終えると、琴葉は安堵から瞳を潤ませていた。

「そうか。すまない。実は知っていた。今日お前の様子がおかしいから新木を呼び出して訊いた。上司として部下に何かあったら困るからな」
「はい」
「シャインの担当者が琴葉の元カレだったとは知らなかった。仕事で挨拶をしたことは一度だけあったが、向こうも気づいていないようだな。まぁ…学生時代、一発ぶん殴ろうとした先輩のことなど印象には残っていても顔までは覚えていないだろう。接点などなかったから。とにかく、そういうことは出来るだけ相談すること」

「…はい。すみません。相談しようかと思いましたが、個人的なやり取りだったので躊躇しました。それに、私のトラウマの相手なので余計に…」

「わかっている。ただし、個人的に会いに行くのはやめてほしい。上司としてでもあるが、俺個人が行ってほしくない」

「…え、」

「いくらトラウマがあれど、昔の男に会いにいかれるのは、ムカつくんだよ。でも、気になるんだろ?どうして自分とコンタクトを取りたいのか」

柊の発言にドキドキしながら、頷いた。

「だったら俺も一緒に行こう。もちろん上司としてではない。琴葉の彼氏として、だ」

「…はい」

「ようやく笑った。家に帰ってきてからずっと暗い顔をしていた」

柊はそう言って琴葉の顎を掬った。
顔が近づき、軽いキスをされる。至近距離で熱い目を向けられると緊張するしドキドキもするのに、それを逸らすと柊が嫌がるから逸らせない。
そうして、流されるように柊にトン、と肩を押されてベッドに体が沈む。



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