視線が絡んで、熱になる【完結】
「あの!琴葉さんと付き合ってるんですか?!」

奏多の好奇心と野次馬根性が入り混じる表情でそう叫ぶように言う。
どうしてか琴葉ではなく柊に聞きたいようだ。柊は、鞄をデスク下に置くと顔色を変えずに言った。

「付き合ってる。何か問題でも?」
「いえ!みんなが噂してたんで」
「そうか。私情を挟むようなことはしないから安心してくれ。以上」
「…はい!」

涼がニヤ付きながら親指を立ててウインクをした。
どういう顔で返したらいいのかわからないから、数回頷いた。
柊は何一つ困ってなどいない様子だし、それがどうした、という顔をしている。一気に注目の的になったことに関しては想定外だし困ることもあるが、柊が自らの口からそう言ってくれたことが何よりも嬉しかった。
この部署で仕事も恋も頑張っていきたいと強く思った。

「よーし、今日は朝から理道に行くよ」
「はい、資料もばっちりです」
「流石だね~」

柊に目を向ける。絡まる視線に心臓が早鐘を打つ。
彼の視線の先にも、自分の視線の先にもお互いが映っている。
これからも、ずっと。

END
< 189 / 190 >

この作品をシェア

pagetop