視線が絡んで、熱になる【完結】
初めて購入した化粧品は理道の商品だった。価格帯で言うとミドルコスメになるのだろうか。安い価格帯の商品ではなく、初めて購入したものがそこそこの値段のする商品を選んだのは理由があった。

広告だった。何気なくドラッグストアに入ってふと目を向けると大きくポップが張り出されており、“あなたを、魅了する”というキャッチコピーとともに、真っ赤な背景に美人なモデル、そして“変わるんだ、今すぐに”と下に書かれたそれは琴葉のために用意された広告なのではと本気で思ったのだ。

小さな頃から目が悪く、分厚い眼鏡をかけていた。そのせいで、小学生になる頃には“がり勉のガリ子”とあだ名をつけられ、そのくせ成績も芳しくないというダブルパンチだった。
中学に上がる頃にはせめて見た目(あだ名)と釣り合うようになろうと勉強ばかりしていた。
公立中学だったが、高校受験は都内の偏差値70超えの私立高に見事合格した。

とにかく勉強しかしてこなかった。幸いにもひどい虐めのようなことをされた記憶はない。
ただ、友達は本当に少数だったし思春期のあの少女漫画のようなピュアな恋愛をすることもなく、むしろいじられるような位置づけで青春というものを経験してこなかった。

そのため、所謂高校デビューなるものも未経験である。
その後、大学生になって転機が訪れる。
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