視線が絡んで、熱になる【完結】
やはり、昨日彼と一夜を共にしたのは間違いではないし彼は学生時代の自分を知っている。
ごくり、唾を飲み込むものの喉の奥までカラカラで何か飲み物を持ってくるべきだったと後悔した。

「隠すも何も…私は、」

ぎゅうっと太ももの上で拳を作る。動揺を隠すように引きつった笑顔を見せるが柊はすべてを見抜いているように琴葉を見据える。

「元カレに裏切られて、それがお前の黒歴史?」
「…なんで、それを…」
「だから、言っただろ。お前と同じ大学で学部も一緒だったんだよ」
「でも私は知りません…!話したこともないし…サークルも入ってないし、学年も違う…」

早口でまくし立てるようにそう言う。

「覚えてないわけか」

強く鋭く光る瞳は、愁いを帯びたものへと変化し、琴葉の心を揺さぶる。

「知っているんですか…私のこと」

怯えたような面持ちの琴葉に柊は間髪入れずにもちろん、と答える。
―琴葉の最低な過去、消してしまいたい過去を彼は知っている。
琴葉はそこまで言う柊との接点をそれでも思い出すことが出来ない。

「あの…学生時代のことは、言わないでください。私にとって、思い出したくもない過去なんです」
「どうして?」
「それは…色々あって」
「男に裏切られたとか?」
「っ」
「当たってるのか」

どこまで知っているのだろう。
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