視線が絡んで、熱になる【完結】
「改めましてブランドマネジメント部の西田です」
「プロモーション部の勝木です」

彼女たちに合わせて琴葉と涼も同様に挨拶をした。大型スクリーンに理道新ブランドについてとタイトルが表示され、西田が立ち上がる。
琴葉たちの視線が彼女に注がれる。

「手元にある資料二枚目をご覧ください。今回私たち理道から新ブランドを出す予定です。今年の年末を予定しています。そこでH&Kさんとこれらを一緒に作っていきたいと思っています。資料三枚目に移ります」

内容は涼から聞いていた通り、新ブランドの立ち上げをするということだった。
化粧品は営業利益の二割を占める。理道の財務諸表はチェックしてきた。
企業にとって重要な損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書それらを見るとその会社の営業利益や財務状況がわかる。
理道は大手企業ということもあり非常に安定してる。しかし、化粧品部門だけ伸びが悪い。
前年比でみると競合他社の方が売り上げがいいようだ。
琴葉は資料を捲りながら、新ブランドとはどういうものなのか気になった。
今後自分たちが携わっていく化粧品ブランドの詳細を早く知りたい。
粗方説明を終えると西田が席に戻る。
今回の新ブランドは三十代以降をターゲットにしているようで、価格帯も口紅一本四千五百円、ファンデーションはどれも一万円弱を設定している。

「なるほど。高価格帯のブランドですね。展開先は…」
「主に百貨店になります」
「そうですか。ブランド名は“凛”ですね」
「そうです。ターゲット層は働く女性です。価格設定的に30代以降をターゲットにしています。しかし、理道の商品は年代、性別問わず誰もがときめきを覚えるような商品を作っていきたい」

西田の隣の勝木が口を開く。

「次回までに予算等を考慮してマーケティングをお願いしたいです。予算は最後のページに」
「わかりました。とりあえず企画部と打ち合わせします」

1時間弱の初の打ち合わせは終了した。ほぼ涼が会話を進めていて琴葉に出る幕はなかった。
それが悔しいというか、モヤモヤと何かが残っていた。
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