視線が絡んで、熱になる【完結】
♢♢♢

「今戻りました~」
「戻りました!」

営業部に戻ると、柊と智恵だけがデスクにいた。
奏多はまだ外勤らしい。
デスクに鞄を置いて椅子に腰かけるとすぐに柊が近づいてくる。涼と琴葉の背後に立つと、

「どうだった?初めての打ち合わせは」
「今日は顔合わせ程度です。琴葉ちゃんもばっちりですよ」
「いえ。課題も多いです」
「そうか。よかった」

珍しく朗らかな笑顔を向ける。
あんな顔、するんだ…。

「そうだー、今週飲みに行こうよ」
「はい、それは…クライアント先とか?」
「いやいや、プライベート。サシで」
「ふ、二人?!」

驚き、目を見開くが涼は何故琴葉が驚いているのかわからないようだ。
涼にとっては、異性とか同性とか関係なくただ琴葉を仕事上のパートナーとして誘っているだけだというのはわかっている。しかし、異性に耐性のない琴葉にとってそれはハードルが高すぎる。

「いや~えっとそれは…」
「なんで?彼氏いるの?」
「いないです」
「そうなんだ。琴葉ちゃん可愛い顔してるから長く付き合ってる彼氏いそう」
「…っ」
“可愛い”
言われ慣れていないその言葉は琴葉を刺激するには十分すぎる。
綺麗とも言われ、可愛いとも言われた。サラッとそんなことを言える涼は相当女性に慣れているのかもしれない。

中高生でもあるまいし、こんなことであたふたするなんて恥ずかしい。それなのに上昇する体温をどうすることもできずにいた。
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