視線が絡んで、熱になる【完結】
「あの!化粧品ありがとうございました。大切にします!でもこれで失礼します」
「はぁ?腕時計取りに来るんだろ」
「だって…下着って…」

赤面する琴葉に呆れたように息を吐いていう。

「諦めろ。お前を離す気はない。お前みたいな鈍感な女は多少強引にいかないと視界にすら入れてくれないからな」
「……」
「それ、貸せ」
「どうしてですか」
「いいから、」

何が何だかわからない。ここまで強引な人物に出会ったことのない琴葉はただただ困惑して彼に流される。琴葉の手から化粧品の入った紙袋を取り上げる。
慌てふためく琴葉に柊は
「重たいだろ」
それだけ言って正面を向く。
不意に見せる優しさにドキドキしている自分がいた。それは自分に男性への耐性がないだけだ、そう思った。
しかしこの胸がきゅうっと締め付けられるような感覚を知っているような気がした。

まさか、そんなわけない。一瞬浮かび上がる感覚を否定して下唇を噛んだ。
結局柊の言われるがまま、下着と仕事用のブラウスなどを購入させられて(柊は女性ものの下着売り場に入ることを躊躇しない鋼のメンタルを持った男だと判明した)百貨店を出た。

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