視線が絡んで、熱になる【完結】
「洗濯するか?」
「へ…」
「家政婦に家の掃除は頼んでるから洗濯機はあるがほぼ使用していない。だから適当に使ってくれ」
「家政婦に頼んでるんですか?」
「そうだ。何か問題でも?」
「いえ…」
「今日は泊まるんだから今着ているもの洗濯したらどうだ。乾燥機もついてる」
「と、泊まりませんよ!何言ってるんですか」
「いいからつべこべ言わず脱げ、洗濯してこい」
「…何なんですか!私はっ…―」

と、急に柊が琴葉の目の前まで来るとぐっと腕を掴む。突然のことに慌てる琴葉とは対照的に相変わらず変わらない威圧的な態度を見せる。

「いいから、今日は泊まっていけ」
「…だって…」
「ほら、これ着てろ。ついでにシャワーも浴びてこい」

柊はそう言って琴葉に明らかに大きい男性用のTシャツと部屋着用のハーフパンツを手渡す。
わかりました、と言って洗面所に向かう。
強引な彼に流されるように従っていいのだろうか。
今朝も使用した空間に入ると一息ついた。と言っても広すぎるこの場所はまるで高級ホテルのような内装で本来ならば落ち着かないのだろうが柊が入ってこないとわかっているから安堵の息が漏れたのだ。
全面鏡の洗面脱衣室にはお洒落な洗濯機と小さめの冷蔵庫もあった。
お風呂場はさらに奥に進みドアを挟んだところにある。

シャワーを浴びるために服を脱いでいく。ブラウスのボタンを外している最中ドアが開いた。
悲鳴にも似た声が響き渡る。

ドアを開けた犯人が誰なのかはもちろんわかっているがまさか開けられるとは思ってもいなかった琴葉は腰を抜かしてしまう。

「ちょ、ちょっと…何するんですか…」

既にスカートは脱いでいた。胸元も開けていて咄嗟に外気に触れる部分を腕で隠すが下は隠せない。

「シャワー浴びる前に、言っておきたいことがあったんだ。ていうか何で腰抜かしてるんだよ」
「だ、だって…今私脱いでる途中ですよ?!いい加減に…―」
「じゃあ立たせてやる」

柊が琴葉の腕を掴み、無理やり立たせる。泣きそうになるのを必死に堪えた。
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