視線が絡んで、熱になる【完結】
時刻は既に22時になろうとしていた。
終電までまだあるし、帰ろうと思えば帰れる。一人暮らしには大きすぎる500リットル以上の容量があるであろう冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す柊の背中に声を掛ける。
「あの、私のことどうして知っているんですか?」
別に過去のことを知っているのは仕方がない。あの“黒歴史”を知っているとしても、琴葉にはどうすることもできないのだ。
柊がまだ少し濡れた髪の間から精悍な目つきで琴葉を見る。
…この色気はどこから来るのだろう。
「何度も言ってるだろ。同じ大学だった。学部もな」
ミネラルウォーターを一本、琴葉にも差し出す。頭を下げてそれを受け取った。
「でも、私の記憶にはありません」
「…そうだろうな。何度か喋ったことはあるけど」
「え?そうなんですか」
「あるよ。お前はどこかの誰かに夢中だったみたいだから」
「…っ」
柊の話すどこかの誰かとは、春樹のことだろう。すぐに蘇ってくるあの苦い記憶に顔を歪ませる。そんな琴葉の心情を知ってか知らずか、柊は続けた。
終電までまだあるし、帰ろうと思えば帰れる。一人暮らしには大きすぎる500リットル以上の容量があるであろう冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す柊の背中に声を掛ける。
「あの、私のことどうして知っているんですか?」
別に過去のことを知っているのは仕方がない。あの“黒歴史”を知っているとしても、琴葉にはどうすることもできないのだ。
柊がまだ少し濡れた髪の間から精悍な目つきで琴葉を見る。
…この色気はどこから来るのだろう。
「何度も言ってるだろ。同じ大学だった。学部もな」
ミネラルウォーターを一本、琴葉にも差し出す。頭を下げてそれを受け取った。
「でも、私の記憶にはありません」
「…そうだろうな。何度か喋ったことはあるけど」
「え?そうなんですか」
「あるよ。お前はどこかの誰かに夢中だったみたいだから」
「…っ」
柊の話すどこかの誰かとは、春樹のことだろう。すぐに蘇ってくるあの苦い記憶に顔を歪ませる。そんな琴葉の心情を知ってか知らずか、柊は続けた。