視線が絡んで、熱になる【完結】
「そろそろ寝るか、行くぞ」
「え、どこに」
「寝室だよ」
「私ソファで寝ます。だから…―」
「なんだ、俺のベッドが不満か?キングサイズだから二人でも十分に広い」
「そういうことじゃなくて!!付き合ってもいない男女が同じベッドで寝るなんてどうかしてます。それに私はそんなに軽くありません…」
「じゃあ付き合えばいい」
「なっ…」

いったいこの人の価値観はどうなっているのだろう。
呆れて言葉が出てこない。柊にとって付き合うとはその程度のものなのだろうか。琴葉にとって、それは特別だった。学生時代、付き合ったのも本気で春樹のことが好きだったからだ。
思い出すと今でも涙がこみ上げる。

「え…―」

急に視界がぼやける。同時に片手に持っていたミネラルウォーターが床に落ちる。
視界がぼやけたのは、柊が琴葉の眼鏡を許可なく取ったからだ。

「見えません…っ返してください」

琴葉の腕を掴むと、琴葉の体を抱きかかえ、寝室へ連れていかれる。
足をばたつかせてみるものの柊は無言でベッドの上に琴葉を下ろす。
視力の悪い琴葉は、目を細めて必死に辺りを確認するがよく見えない。

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