視線が絡んで、熱になる【完結】
「不破さん!」
「ギャーギャーうるさいんだよ。俺が相手じゃ不満か?」
「だから…っ…私は、」
「ほら、俺を見ろ」
「見えません…眼鏡を返してください」


トン、と肩を押されて気づけば今朝目覚めたベッドの上に背中を預けていた。視界が反転したようだが視野がぼやけてよくわからない。
琴葉の体の重みではなくベッドが沈む感覚がした瞬間、柊が琴葉を見下ろしていることに気づく。今までに経験したことのないほどドキドキしてしていた。
そして、柊の顔がキスしそうなほどの距離にある。呼吸が自然に止まる。

「ほら、こうすれば見えるだろ」
「不破、さん…」
「見えるか、俺の顔」
「見えます…でも、こんなこと、良くない…です」
「昨日お前が隣で寝ている横で、我慢したんだ。褒めてほしいくらいだね」
「が、まん…?」
「そうだよ。寝てる女を抱くような趣味はないし、お前が欲しがるまではしない」
「…私のこと、女として見ることが出来るんですか」
「はぁ?女としか見てない」
「っ」

柊の言葉に琴葉は身動き一つ取ることが出来ない。
数秒、見つめ合う。
視力が悪くても今にでもキスしそうな距離では嫌でも柊の端正な顔が視界に入る。
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