視線が絡んで、熱になる【完結】
熱い、全てが熱い。
一体どうしてしまったのだろう。キスをせがむなどどうかしている。けれど、琴葉は必死に柊のキスを受ける。

“女としか見ていない”
そんなふうに言ってくれたのは、柊だけだった。

―柊の前なら琴葉は女の顔になる。

ようやく唇を離すと息を切らし、胸元まで真っ赤になる琴葉が目に入り柊は珍しく顔を歪めた。
琴葉は虚ろな目でそれを確認するがどういう感情でそんな顔をしているのかは理解できない。

「ようやく、俺を視界に入れてくれた」
「…意味が、わかりません」

唾液に濡れる唇を柊の指が撫でる。枕に琴葉の艶のある黒髪が広がっている。
胸で大きく呼吸をする琴葉の横にようやく柊が移動して威圧感のある彼の視線から解放されるとほっとした。
しかし同時に少しばかりの寂しさもあった。

―もっと、触れてほしい。

思ってはいけないのに、そんなふしだらな考えが浮かぶ。
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