視線が絡んで、熱になる【完結】
「じゃあ、先に行きます」
いつの間にかスーツ姿になった柊に伏し目がちにそう伝える。紺色のネクタイを首元で調節しながら琴葉を見る柊の手が一度止まった。
「なるほど。やっぱり綺麗だ」
「…っな、」
「休みの日はコンタクトも揃えた方がいいな」
「…はい。あ、化粧品って…」
簡単に綺麗と言えてしまう柊に琴葉も簡単に顔を火照らせる。
綺麗と言われる度に、綺麗になっているような錯覚を覚えるほど柊の口から発せられる言葉は特別だった。
琴葉は昨日購入した化粧品の入った紙袋を見ながら答えた。
「持って帰った方がいいですよね。邪魔だし」
「置いておけばいいんじゃないか。重いだろ。まぁ、確かにお前が自分の家に帰宅したら化粧品が手元にないわけか…」
別に重くても柊の家にそれらを置いておく理由にはならない。それなのに、また彼の家に来る“口実”を自ら作ろうとしているような気がして自分がわからなくなる。
(一体、私はどうしたいの…?)
「わかった、これはここに置いていけばいい。土曜にまた化粧品揃えて買ってやる」
「へ?!いや、いいです!何言ってるんですか」
「同じものでいいなら俺が買ってきてやってもいいが…どうせなら違うものも買ってみたらどうだ。それをお前の家に置いておけばいい。面倒なら一緒に住んでもいい」
「い、一緒に住む?!」
フラフラと体を左右に揺らして危うく座り込みそうになるのを近くのダイニングテーブルの端を掴んで支えた。
柊の考えはやはり琴葉には理解できないと悟って、「とりあえず、出社します…」とだけ言って家を出た。
いつの間にかスーツ姿になった柊に伏し目がちにそう伝える。紺色のネクタイを首元で調節しながら琴葉を見る柊の手が一度止まった。
「なるほど。やっぱり綺麗だ」
「…っな、」
「休みの日はコンタクトも揃えた方がいいな」
「…はい。あ、化粧品って…」
簡単に綺麗と言えてしまう柊に琴葉も簡単に顔を火照らせる。
綺麗と言われる度に、綺麗になっているような錯覚を覚えるほど柊の口から発せられる言葉は特別だった。
琴葉は昨日購入した化粧品の入った紙袋を見ながら答えた。
「持って帰った方がいいですよね。邪魔だし」
「置いておけばいいんじゃないか。重いだろ。まぁ、確かにお前が自分の家に帰宅したら化粧品が手元にないわけか…」
別に重くても柊の家にそれらを置いておく理由にはならない。それなのに、また彼の家に来る“口実”を自ら作ろうとしているような気がして自分がわからなくなる。
(一体、私はどうしたいの…?)
「わかった、これはここに置いていけばいい。土曜にまた化粧品揃えて買ってやる」
「へ?!いや、いいです!何言ってるんですか」
「同じものでいいなら俺が買ってきてやってもいいが…どうせなら違うものも買ってみたらどうだ。それをお前の家に置いておけばいい。面倒なら一緒に住んでもいい」
「い、一緒に住む?!」
フラフラと体を左右に揺らして危うく座り込みそうになるのを近くのダイニングテーブルの端を掴んで支えた。
柊の考えはやはり琴葉には理解できないと悟って、「とりあえず、出社します…」とだけ言って家を出た。