視線が絡んで、熱になる【完結】
香水なのかわからないが、“いい香り”がする。
甘すぎず、媚びていないのに女性らしさのある香りは智恵にぴったりだった。

「そういえば、今日はちょっと雰囲気が違うのね?」
「そうですか?」

柊のことを見透かされているのでは、と思ったがそうではないようだ。
智恵がくすっと小さく笑うと視線を流すように琴葉の顔を見て、また正面に向き直る。

「化粧してきたの?とっても綺麗よ」
「…っ」
「マスカラとかシャドウとかはしないのね?化粧映えしそうな顔なのに勿体ない」
「そうですかね…」
「私は一番口紅が好きなの。塗っただけで色っぽくも可愛くもなれる」

ふっと優しく口角を上げる。唇の下にほくろがあって色気のある智恵はほくろの位置まで色っぽいのかと感心してしまった。
じゃあ先行くわよ、と言って出ていった智恵の言葉に胸が詰まる。
今朝の柊の言った通りだった。智恵も琴葉を馬鹿にはしなかった。むしろアドバイスをくれた。
もしかしたら、自分が気にしていることは実はたいしたことではないことが多くて自ら雁字搦めに縛りつけているだけなのではないか、そう思った。
< 67 / 190 >

この作品をシェア

pagetop