視線が絡んで、熱になる【完結】
それから数週間が経過していた。
柊は昔から人と接するのが好きなわけではないのに、不思議と人が集まってくる。
それは大学生になってからも同様だった。ゼミに入ると毎週のように飲み会に誘われ、サークルでも同様だった。合コンも好きではないが、彼女を作るのが面倒だったから手っ取り早く合意の元“そういう関係”の女性を作れるのは柊にとっても好都合だったから毎回断るわけでもなかった。

たまたま図書室で専門書を借りに行こうと学生証を使って入ると、ちょうど奥の長テーブルに見知った顔があった。
すぐにあのカフェテリアスペースにいた子だと気づく。
前回見たときと同じ格好で、同じように勉強をしていた。違うのはコーヒー牛乳を今日は机の上に置いていないことだけだ。

「…」

なんとなく気になって、早々と専門書を探し出すと彼女の斜め前に座った。
辺りを見渡すと他にもスペースはあるのに、琴葉の近くに腰かけるなど普通だったら明らかにおかしいと気づくだろう。
しかし、彼女は一切柊には気づかずに黙々と勉強をしていた。
以前よりも彼女と近い距離だから前よりも細かく観察をすることが出来た。

(…何してんだ、俺)

そうは思ったものの、この感情の正体を知りたくて専門書を開きながら彼女を観察する。
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