視線が絡んで、熱になる【完結】
研究室で蓮と次回のゼミの発表資料を作っている最中のことだった。
名前も知らない彼女のことを蓮に聞いてみたくなったのだ。

「なぁ、この間話してた子の話、何か知ってる?ていうか名前何ていうの」
「はぁ?この間って、あぁ、…一年の子?確か藍沢…琴葉っていうんじゃなかった?最近テニスサークルの彼氏できたって。ていうか興味なさそうだったのに、なんで?」

―彼氏ができた

想定内だった。ある程度は予想していた。しかし、自分がショックを受けているという事実の方が想定外だった。

「何でもない。テニスサークル、か」

頬杖をつき、息を吐いた。
藍沢琴葉、話したことはある。だが、彼女の目の中には入れてもらったことはない。だから事実上、赤の他人だ。それでも、彼女が幸せならそれでいいと思った。

なのに―。

「でも、なーんかあれらしいよ。噂だけど、罰ゲームで負けた奴があの子に告白するっていう感じのことやってるって」
「は?…」
「俺も後輩に聞いたから本当かどうかはわからないけどさぁ。それだと後味悪いよな。さすがの俺も笑えねぇ」

事実かどうかはわからない。

だが、それが事実だったら―…。そう思ったら居ても立っても居られなくなった柊は立ち上がり藍沢琴葉を探した。
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