視線が絡んで、熱になる【完結】
智恵が柊に笑いかけていた。そして、隣にいる柊も珍しく柔らかい目を彼女に向けている。胸がざわついた。
数分のうちに様々な感情が入り混じる。

「琴葉ちゃん?しかめっ面してどうしたの」
「いえ、すみません。集中します。あの…智恵さんって…不破マネージャーと仲いいんですか」
「え?智恵さん?あぁ、」
涼がどぎまぎする琴葉に小さく耳打ちした。
「あの二人、昔付き合ってたみたいだよ」
「えっ…」
「お似合いっていえばそうだよね~美男美女だしどっちも仕事できるし。まぁ数か月で別れたっぽいけど」
「…そう、ですか」

胸の奥がズキズキと痛むのは、そして…こんなにも柊と智恵の過去が気になるのは、それはきっと


―彼に恋をしたから、だ

二度と恋などしない、男なんて懲り懲りだ、そう思っていたくせに一瞬で恋に落ちた。
なんて軽い女なのだ、と思ったがもう遅い。一度動き出してしまった感情は止まらない。必死に忘れようとしてるのに一人でいるときに必ず柊を思い出してしまう。
強引なのに優しくてあたたかい。そして、まるで琴葉に好意があるのではと錯覚してしまいそうになるほどの熱い視線だけで胸の高鳴りが止まらない。
この感情は、やはり恋なのだ。
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