視線が絡んで、熱になる【完結】
「違います違います、それはないです」
「だって今日結構な頻度で不破マネージャーのこと見てたよね」
「…それは、」
「まぁまぁ、俺は誰にも言わないよ」

いくら否定したところで、涼にとってそれはもう事実らしい。首を横に振るがその力もどんどん弱まり最後には俯いた。顔に熱を感じるから恐らく頬は真っ赤だろう。
涼しい顔して否定出来たらいいのに、涼の発言に動揺しすぎて無理だった。

「とりあえずなんか頼もうよ!ここてんぷらが美味しいらしいよ~何が好き?」
「…あの!マネージャーには言わないでください…」
「今言わないって言ったじゃん。俺口軽いように見える?」
「いえ、一応確認を」

ふふっと笑う涼にさらに琴葉は顔を赤らめた。
お通しのイワシの南蛮漬けをいただきます、と言って口に含んだ。
カリッと揚がるイワシに甘酸っぱいタレが絡んで美味しかった。柊が来るまで適当にメニューを頼んだ。

「で?どういうところが好きなの?」
「その話はいいじゃないですか」
「いいじゃん、いいじゃん。仕事の話なんかつまらないんだからさ」
「…どういうって、別に」

口をもごもごさせて、控え目に涼を見ながらビールを喉に流し込む。
涼も随分酔いが回っているようで、饒舌になる彼は琴葉の恋愛話から離れる気はないようだ。
柊と一夜を過ごしたことを言うことはできない。
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