視線が絡んで、熱になる【完結】
琴葉の顔がみるみるうちに青ざめていく。本当のことを簡単に話してしまうのならば、柊に好意があることも伝えてしまうのではないかと更に慌てる琴葉に、柊は冷淡な目を向ける。

「何だよ。内緒の話か?」
「違います!」

それでも目を細めて、訝し気に琴葉を見る柊。
この好意は絶対に隠さなくてはいけないのに、涼のせいでバレたらどうしてくれるのだ。
涼に怒りの目を向けるものの、涼しい顔をして知らんぷりをする。

「…もう…」
「琴葉ちゃん、コンタクトにすべきですよね?マネージャーもそう思いません?」
「そうだな。確かにそれはそう思う。だが、お前に言われるのは癪だ」

柊の発言に、涼はクツクツと喉を鳴らして笑う。
「なんだ、そういうことか」と意味不明のことを言って、ちょうど頼んでいた日本酒が入ったグラスでぐいっとそれを飲む。
琴葉は柊に自分の好意がバレていないか気が気でない。そのため、ビールを飲むスピードが上がっていく。

「おい、飲みすぎるなよ」
「…わかっています」

涼と柊は仕事の話で盛り上がっていた。琴葉も適当に合図を打つが気づかれていないか心配で終始上の空だった。
二時間半ほど店内にいて、その後解散した。琴葉は何を食べたか記憶がおぼろげなほど酔っていた。
涼は「じゃ、頑張ってね」と言って、琴葉に耳打ちをすると陽気に去っていく。
ずんと重い瞼を必死に開いて立っていると、柊に腕を掴まれる。

「行くぞ」
「…はい」

どこに、とは聞かなかった。おそらく柊の自宅だということは想定していたし琴葉もそれを期待していた。
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