視線が絡んで、熱になる【完結】
「ええっと、これは…今日不破さんの家に泊まるかもしれないから…自宅から…持ってきまして。化粧水とか…肌着とか、」
「……」
「だ、だって!不破さんが…っ…家に来てもいいっていうから…明日だって、デートするっていうから…少しくらい楽しみにしていたって…いいじゃないですか…」

無言で見下ろされて、つい早口で喋ってしまったのは琴葉の本音だ。
一度出てしまった言葉は戻すことはできない。柊が一体どんな顔をしているのか見る余裕すらない。
ここへ来ることを心待ちにしていたのは琴葉の方で、柊がどう思っているのかまではわからない。しかし、既に柊に惹かれていることだけは事実だった。

「しゃ、シャワー浴びてきます!バスローブお借りしますっ!」

結局、琴葉は柊と目を合わせることなく洗面所へ向かった。
琴葉の自宅のシャワーよりも圧の強いシャワーを浴びながら必死で先ほどの光景も一緒に洗い流そうとする。

「はぁ…」

関われば関わるほど、柊に魅了される。柊に会いたくなっていくのだ。

シャワーを終えて髪を乾かしてリビングに戻ると柊はソファの上でくつろいでいた。
ワイングラスを片手に今日はノートパソコンで何やら検索しているようだった。
「なんだ、上がったのか」
「はい、ありがとうございました」
「じゃあ、俺も浴びてくる」

淡々とそういうと、柊はノートパソコンを閉じて琴葉の脇を通り過ぎる。
(…意識してるの、私だけなのかな)
そう思うほどに柊は仕事をしているときと変わらないし、今日なんて普段よりも不機嫌な気がしていた。
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