視線が絡んで、熱になる【完結】
あまり感情の起伏が無さそうなのに、今日は何かあったのだろうか。
バスローブ姿のまま、一人でソファに座りながら柊が戻ってくるのを待っていた。しかし22時過ぎという時間も相まってか、次第に瞼が重くなりいつの間にか眠ってしまっていた。

目を覚ましたのは、誰かに抱きかかえられている振動を全身で感じたからだった。
酔いもあってか、瞼が重い中薄っすらとそれを開けると、柊の腕の中にいた。

「…っわ、」

一気に目を見開き、吃驚する琴葉をちょうどベッドの上に下ろしている最中だったようだ。
自分がソファで寝ていたことを知り、すぐに彼に謝る。しかし柊からは何の応答もない。

「…不破、さん?」

不安げに声が小さくなっていくのが柊にも伝わっているのだろうが、一向に何の返事もない。ベッドの中心に寝かされて、膝立ちで琴葉を見下ろす柊の精悍な目つきにゾクッと体が震える。

「今は不破さんじゃない、柊って呼べ」
「…」
「なんだ、不満か?」
「いえ、違いますが…」
「楽しみなのか?明日のデート」

触れてほしくない部分に何の抵抗もなくそこに入り込む柊の質問に頷いた。

「よかった。だけど、今日のお前にはイライラするんだよ」
「え…」

イライラする、その言葉は簡単に琴葉を絶望させる。それほど柊に夢中になっているのだということを認識せざるを得ない。
柊も琴葉と同様にバスローブ姿でシャンプーのいい香りが鼻を掠める。自分も同じ香りを纏っていると思うと胸が熱くなる。

「俺以外の男を視界に入れてほしくない」
「ん?え?」

しかし、イライラする理由として挙げられた理由に琴葉は呆気にとられる。
男の人だけを視界に入れないなんて無理だ。何を言っているのだろう、この人は。やはり柊の言動は不可解だった。
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