視線が絡んで、熱になる【完結】
ゆっくりと近づく顔に無意識にきつく目を閉じた。
するとコツン、と額と額が触れる感覚に薄く目を開ける。が、目の前に柊の顔があり発作を起こしてしまうと思い再度瞼を閉じようとするが、柊が囁くように言った。

「嫌なら言ってくれ。無理にするつもりはない」
「…嫌ではありません。緊張で…あと、心臓が…持たない…」

ふっと軽く笑みを浮かべた柊は琴葉の前髪を右手でそっと撫でる。髪には神経などないがそれにすら反応してしまう自分にこれ以上のことが出来るのか不安になる。
しかし、柊の優しい声に、表情に…どうしても彼に包まれたかった。
もしかしたら琴葉以外にも蠱惑的な顔を見せているのかもしれない。それでも、どうしても、彼が良かった。

「心臓が持たない、とは…良い意味で?嫌ではないんだな」
「それは、はい…」
「大丈夫、やさしくする。多分」
「多分?…」

珍しく曖昧な表現を使う柊に一抹の不安を覚えるが視線を彼から離した途端、視線を逸らすなとでもいうように唇を押し付けられる。

「んっ…」

くぐもった声が漏れた。二度目のキスは荒々しくてとても琴葉を気遣っているようには思えない。しかし同じくらいに琴葉を求めていることが伝わってくる。
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