エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
 ハーキム氏を避けるには、仕事を辞めるかしばらく休職して日本へ帰るしかないのか。思案しながら休日を過ごし、市場やショッピングセンターで買い物するにも周辺に注意しながらだった。

 父に話さなければならない瀬戸際で、次にハーキム氏の接触があるまでは黙っていようかと悩んでいた。

 火曜日、通勤やフロントで仕事をしていてもビクビクしている。

 このままではいけないと思いながらも、断られ続けたハーキム氏があきらめてくれていたらと一縷の望みも捨てられない。彼のような王族の親戚でお金持ちならば、妻になりたい女性がたくさんいるだろう。その中の女性に目を向けてくれるかもしれない。

 早々に仕事を終わらせ、ハーキム氏がいませんようにと祈りながら駐車場へ向かい、愛車までたどり着いた。

 よかった……。

 彼の姿はなく、安堵しながら車に乗り込みエンジンをかけた。

 自宅に向かいながら、お客様をもてなす料理の段取りを考える。

 メニューは〝バミヤ〟といわれるこちらの牛すじの煮込み、十種類の野菜サラダ、魚介類のカルパッチョとライスコロッケ、豆のスープを作る予定だ。

 バミヤと豆のスープはメイドに頼んでいる。一時間もあれば作り終わるはずだ。

 二十分後、自宅のある高級住宅地へ進ませ、角を曲がったところで家の前に大きなSUV車が止まっているのが目に入った。

 あれはハーキム氏の車!?
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