エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
 門の前に止まっているので、私の車が中へ入れない。

 ボディガードたちもハーキム氏の身分がわかっているのか、そのままでいる。

 こんなところまで……。

 ハーキム氏の行動に呆気に取られるばかりだ。

 私は怒りに任せて車をすぐそばまで進ませた。エンジンを切って車から降りたところで、SUV車からハーキム氏が降りてくる。

「やあ、マカナ。デートに誘いにきた」

 浅黒い顔で口ひげをたくわえたハーキム氏は笑みを浮かべて、真紅のバラの花束を差し出す。

「家の前に車を止められては困ります。今すぐどかしてください」

「それはすまなかった。おい、車を移動させろ」

 そばにいたボディガードに指示を出したハーキム氏は、バラの花束を受け取ろうとしない私の顔の前にそれを持ってくる。

「君のように美しいバラだ。受け取ってほしい。これからレストランへ行こう」

「いいえ。ご期待に沿えないのでいただくわけにはいきません」

 私は子どものように両手を後ろに回した。

「もう仕事は終わっている。家に戻ってきたのなら、この後はフリーではないか」

「いいえ。お帰りください」

 今父が戻ってきたらと思うと、内心ひやひやものだ。

「マカナ、そんなつれなくしないでくれ。寂しいじゃないか」

 あきらめないハーキム氏にギュッと口もとを引き結ぶ。

「マカナ!」
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