エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「年配のおじさんかと思ったら、信じられないくらいかっこいい男性よ!」

「本当に!? 見たいわ」

 彼女たちはドバイの中流家庭で育ち、ふたりとも独身だ。英語教育もされているので意思疎通ができる。

 この約四年間で私のアラビア語も少しは上達したけれど、スムーズに会話するにはまだまだだ。

 私たち親子以外あまり東洋人とは接触のない彼女らにも、月城さんはかっこよく見えるのね。

 盛り上がっていた彼女たちだが、ハッとした様子で遠慮気味に私をちらりと見て、叱られると思ったのか仕事を始める。

 レモンをギュッと手で絞り、その汁が目に飛んだ。レモン汁が染みて、ポロポロ涙が出てくる。でもレモンだけのせいではない。

 ハーキム氏が自宅に現れたショックが今になって襲ってきたようだ。

「ミズ・マカナ? 大丈夫ですか?」

 サナーが冷蔵庫からおしぼりを持ってきて差し出す。

「あ、ありがとう」

 父は先ほどのことを知りたいと思っているだろう。

 しっかりしなきゃ。

「これを混ぜてください」

 サナーにレモンやオリーブオイル、黒コショウ、ハーブを入れた液体を委ね、そのほかの料理の仕上げにかかった。


 八人が座れるダイニングテーブルの端に三人分のカトラリーとカマラたちが作ったパンがそれぞれに置かれ、まずはサナーが運んできた豆のスープから食事が始まった。

 私の斜め右手に父が座り、対面に月城さんがいる。
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