エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「月城くん、なにを言うんだ。今日は娘が手伝ったが普段はメイドたちに任せっきりなんだ。迷惑などではないから安心してほしい」

 父は彼を気に入っている様子だ。

「ありがとうございます」

「ジムもプールも遠慮せずに自由に使ってくれ」

 月城さんは鍛えられている体躯がスーツの上からでもわかる。

 今までまったく使っていないジムが初めて使われそうだ。


 客人のもてなしがちゃんとできた満足感からか、その日のバスタイムはゆったりした気分で、クラシックの音楽を聴きながら一時間ほど楽しんだ。

 サテン地のベビーピンク色のタンクトップとショートパンツのパジャマ姿で、髪にタオルを巻いたままテラスへ出る。

 日中うだるような暑さで、今もムワッと肌にまとわりつく熱だけど、エアコンの効いた室内からだとその感覚は気持ちいい。

「ふぅ~」

 ペットボトルの炭酸水をゴクッと喉に通して、手すりにだらっと両腕をかける。

 明日は仕事帰りに映画を観てこようかな。

 月城さんが滞在しているが、すべての夕食を一緒にとは父も言わないだろう。

 見下ろすプールには誰もいない。

 初日早々には使わないよね。

 両手を突き上げて伸びをし、もう一度炭酸水を口にしたとき、押し殺したような笑い声が聞こえてきた。

 えっ……?
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