エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
二、ドSな外交官は救世主?
翌日、ノースリーブのワンピースを着て支度を終えた私はダイニングルームへ足を運ぶと、すでにスーツ姿の父と月城さんがいた。
ふたりの表情は険しい。テーブルの上に置かれた、五個のプラスチック製の黒いものが目に入った。指先ほどの大きさのそれらはすべて叩き割ったようにつぶれている。
「お父さん、おはよう。月城さん、おはようございます」
昨晩を思い出し気まずいが、小さく笑みを浮かべて挨拶をする。
「おはよう」
「おはようございます」
こちらに顔を向けたふたりが応えるが、父の顔は困惑している。
「……それはなに?」
「盗聴器ですよ」
首をかしげる私に答えたのは月城さんだった。父がいるとき彼は敬語を使う。
「ええっ!?」
私は言葉を失った。
月城さんがほのめかした推測が実際に行われていたのだ。