エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「ただいま。ほとんど食べていないんだ。いただくよ。その前にシャワーを浴びてきていいか?」

「もちろんです」

 父と同じパターンで、おかしくなって口もとを緩ませる。

「なにかおかしいか?」

「あ、いえ。帰宅した父も同じことを言ったので、おかしくなったんです」

「なるほど。じゃあ、悪いが用意を頼む」

 ハードな一日だったに違いないのに、月城さんは足取り軽く二階へ上がっていった。

 海老とアボカドの巻き寿司だけは作り置きせずにいたので、彼がシャワーを浴びている間に作り終えた。アボカドの変色を避けるためだ。

「今作ったのか?」

 カットし終えると、背後から月城さんの声がした。

「あ、これだけ。色が変わったらおいしくないので。飲み物はビールにしますか?」

 仕事だったらアルコールは飲んでいないだろう。

「ああ」

 冷蔵庫から冷えた缶ビールを出して、月城さんに手渡す。彼はその場でプルトップを開けておいしそうに喉に流し込む。そして満足げに大きく吐息をついてから口を開いた。

「今日はなにを?」

「ゴロゴロしていました。ダイニングにしますか? リビングで?」

 両手に巻きずしのお皿を持って尋ねる。

「リビングで。やつからコンタクトは?」

 歩き出す私の背後から缶ビールを持った月城さんがついてくる。

「いいえ」

「そうか……」
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