エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
 リビングのソファに腰掛けた月城さんは安堵したように見える。私も対面のソファに座った。

 仕事で重責を担っているのに、私のことまで気を回させて申し訳ないと思う。

「ご迷惑おかけして本当にすみません」

「嫌だったらとっくに離脱しているから気にするな」

 そう言って月城さんはツナときゅうり巻きを口へ運んだ。

「今日が重要な日だったのに、昨日出かけたりして大丈夫だったんですか?」

「ああ。用意周到が俺のモットーだ」

「先ほど、ニュースで会談が映って驚きました」

「いい男で?」

 自分で言っておかしかったのか笑っている。

「アラビア語が話せたことにです」

「言っていなかったか?」

 月城さんは海老とアボカドの巻物をひとつつまんだ。

「聞いていませんけど?」

「別にいいじゃないか」

 サラッと言われて、別にそれに目くじらを立てているわけじゃないのでコクッとうなずいた。

「前から思っていたんだが、真佳奈は料理がうまいな。この三種類も、多いと思ったが全部平らげられる」

 月城さんに思いがけず褒められてポカンと呆気にとられた。

 そんな私に、彼は『どうした』と問いかけるように片方の眉を上げる。

「……びっくりしました。月城さんに称賛されるなんて」

「ククッ、称賛は言いすぎだ。軽く褒めただけだ」

 楽しそうにビールをもうひと口喉に流し込む。
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