エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「そんなに簡単な話じゃない。王室を巻き込み、正式にプロポーズされたら領事の立場もあり断りきれないだろう」

「いや、絶対に断るから真佳奈、安心しなさい」

 父は断言するが、私は不安でしかない。父の立場もある。

「浅丘領事」

 月城さんが改まった声で、こめかみ辺りを押さえる父を呼ぶ。

「私がお嬢さんと結婚します」

「ええっ!?」

 父は言葉を失い、私も驚きで腰を浮かした。

「明日戸籍を取り寄せます」

「いや、待ってくれ。知り合ったばかりの娘と結婚とは、あの男にあきらめさせるとはいえ、それでは申し訳が立たない」

 衝撃から必死に冷静さをかき集めた父はそれでも困惑顔だ。

 私が本当に月城さんと結婚を……?

「結婚した女性にはあの男も手を出せないでしょう。そこまでいったら犯罪者です」

「……娘を帰国させよう。そうすれば丸く収まる」

 哀れみで進めるようとする月城さんに、父は気がとがめている。でも、父の意見に賛成だ。私が父から離れ、帰国すればいい。

「領事、本当にそう思われますか? 入籍せずに日本へ彼女が戻っても、あの男の執拗さでは追う可能性もありますよ。あくまでも可能性でしかありませんが」

 想像したら背筋に冷たいものが走り、血の気がサーッと引いて目眩(めまい)を覚えた。

「真佳奈さん、顔色が悪い。大丈夫ですか?」
「はい」
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