エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
王族関係者というのはもちろんのこと、頻繁にスイートルームを利用するような太い顧客だからだ。
「仕事中ですので失礼します」
つんとすまして、きっぱり断りを入れてからバックヤードへ歩を進めた。
ドアを閉めて、ホッと胸をなで下ろす。
フロントの仕事は好きだけれど、こう毎日押しかけてこられるのはたまらないしホテルにも迷惑になる。いっそ客前に出ない仕事に異動させてもらおうか……。
「ミズ・アサオカ!」
焦った顔で間髪をいれずにやって来たのは五十代のフロントマネージャーだ。黒いスーツを着た彼は現地の人で、浅黒い顔に汗の粒を浮かべて私の前へ立った。
「困るよ。ハーキム氏が憤慨している」
「私の方が困ります」
「本当にどうしたものか……その、婚約者とはいつ頃結婚するんだね? そのときは日本へ戻るのかね?」
架空の人物なのでそこまで考えていなかった。しかし、このままハーキム氏があらめてくれないとしたら、帰国も視野に入れなくてはならないと思っている。
「おそらく……」
「とりあえずここで業務をしていてくれ」
フロントマネージャーは重いため息をつきながら、部屋を出ていった。
十八時になり退勤時刻になった。フロントマネージャーによれば、ハーキム氏は十分ほど待っていたが帰ったと教えられた。とはいえ、あれから五時間以上が経っているから、再び待ち伏せしている可能性もある。
「仕事中ですので失礼します」
つんとすまして、きっぱり断りを入れてからバックヤードへ歩を進めた。
ドアを閉めて、ホッと胸をなで下ろす。
フロントの仕事は好きだけれど、こう毎日押しかけてこられるのはたまらないしホテルにも迷惑になる。いっそ客前に出ない仕事に異動させてもらおうか……。
「ミズ・アサオカ!」
焦った顔で間髪をいれずにやって来たのは五十代のフロントマネージャーだ。黒いスーツを着た彼は現地の人で、浅黒い顔に汗の粒を浮かべて私の前へ立った。
「困るよ。ハーキム氏が憤慨している」
「私の方が困ります」
「本当にどうしたものか……その、婚約者とはいつ頃結婚するんだね? そのときは日本へ戻るのかね?」
架空の人物なのでそこまで考えていなかった。しかし、このままハーキム氏があらめてくれないとしたら、帰国も視野に入れなくてはならないと思っている。
「おそらく……」
「とりあえずここで業務をしていてくれ」
フロントマネージャーは重いため息をつきながら、部屋を出ていった。
十八時になり退勤時刻になった。フロントマネージャーによれば、ハーキム氏は十分ほど待っていたが帰ったと教えられた。とはいえ、あれから五時間以上が経っているから、再び待ち伏せしている可能性もある。