エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
まだ考えを変えることはできる。私がハーキム氏の探せないような外国で暮らせばいいのだ。
居ても立ってもいられなくて、パジャマの上からカーディガンを羽織ると、部屋を出て隣の月城さんの部屋のドアをノックしていた。
内側から現れた彼は先ほどのシャツとスラックス姿だった。手にスマホを持っているので、誰かに連絡を取っている最中だっただろうか。
「ごめんなさい。電話中でしたか?」
「いや、メールを打っていた。入って。いや、テラスにしよう」
「自分の部屋から行きます」
テラス用のサンダルがあるからだ。
自室からテラスへ行くと、月城さんは缶ビールを二本持って出てきた。
私の方のソファへ座り、プルトップを開けた缶ビールを差し出される。受け取った私は月城さんの隣に腰を下ろした。
彼はひと口ビールを飲んでから、気だるそうに私を見やる。
「お前の言いたいことはわかる。だが、もう決まったんだ。とやかく気をもまないでいい」
「気をもまないでって……いいんですか? 大事なことですよ? 月城さんには恋人がいるんじゃ――」
「現在恋人はいない。だから安心していい」
いなかったんだ……。
なぜか安堵している自分がいる。
「俺はすぐに人を好きにならない。かといって恋人がいなかったわけじゃないが」
彼の次の言葉に胸がツキッと痛む。
居ても立ってもいられなくて、パジャマの上からカーディガンを羽織ると、部屋を出て隣の月城さんの部屋のドアをノックしていた。
内側から現れた彼は先ほどのシャツとスラックス姿だった。手にスマホを持っているので、誰かに連絡を取っている最中だっただろうか。
「ごめんなさい。電話中でしたか?」
「いや、メールを打っていた。入って。いや、テラスにしよう」
「自分の部屋から行きます」
テラス用のサンダルがあるからだ。
自室からテラスへ行くと、月城さんは缶ビールを二本持って出てきた。
私の方のソファへ座り、プルトップを開けた缶ビールを差し出される。受け取った私は月城さんの隣に腰を下ろした。
彼はひと口ビールを飲んでから、気だるそうに私を見やる。
「お前の言いたいことはわかる。だが、もう決まったんだ。とやかく気をもまないでいい」
「気をもまないでって……いいんですか? 大事なことですよ? 月城さんには恋人がいるんじゃ――」
「現在恋人はいない。だから安心していい」
いなかったんだ……。
なぜか安堵している自分がいる。
「俺はすぐに人を好きにならない。かといって恋人がいなかったわけじゃないが」
彼の次の言葉に胸がツキッと痛む。