エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「……わかりました。マカナをあきらめましょう」

 彼の言葉にホッと安堵した。これでわずらわされずに済むのだ。

「万が一のことがあれば、王族の親戚でも手を打ちますから」

「あなたになにができると言うんでしょう? 一介の外交官でしかないのに」

 ハーキム氏は乱暴にソファから立ち上がり、無言でオフィスの中へ消えていった。

「真佳奈、帰ろう」

 明るい気分でビルを後にした。

 帰宅した月城さんはこれから日本とWEB会議が始まるらしく部屋に入っていった。


 その夜、月城さんのリクエストのボロネーゼパスタを作っていた。

 チーズがたっぷり入ったサラダや野菜と魚の煮込み料理なども、サナーとカマラのふたりに用意してもらっている。

 両手にサラダをのせたトレイを持ち、キッチンからダイニングルームの入口に立ったとき、父と月城さんの会話が聞こえてきて足が止まる。

「月城くん、感謝してもしきれないよ。本当にありがとう」

「領事、もうお礼は言わないでください」

 ふたりは赤ワインを飲んでいて、父が彼の空いたグラスにワインを注ぐ音がしてくる。普段は飲まない父だが、月城さんをねぎらって付き合っているのだろう。

「私が領事としてここにいるのも一年を切っている。そうなれば、結婚も解消できる。いや、あの男がもう二度と現れないとわかった時点で離婚してくれ」
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