エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「証明書を突きつけた際、納得した様子でしたが、しばらく動向を見なければなりませんね」

「君には官房長官の姪との縁談があったと聞いている。本当に申し訳ない。君のご両親に顔を向けられないよ」

 え? 縁談……?

「理解してもらっていますから。外務省の職員として、未然に防ぐためできるだけのことをしただけです」

 結婚を考えている女性がいたと知っていたら、巻き込んだりしなかったのに……。

「真佳奈さんが気にするので、もうこの話はやめましょう。料理上手な彼女にボロネーゼパスタをリクエストしたんですよ」

 結婚する相手がいた話にショックを受け、外務省の職員として尽力しただけだったのだと知って気持ちが沈む。

 悪者から助けてくれたヒーローに惹かれないわけがなかった。しかも彼のような極上の男なら。

 私は深呼吸をひとつして、ふたりのもとに歩を進めた。

 食事中、私たちの入籍話は出なかった。

「真佳奈? どうした? 食欲がないのかね?」

 ぼんやりと父と月城さんの世界情勢の会話を聞いていたが、ハッと我に返る。

「あ……ううん。ホッとしたせいか、ボーッとしちゃった」

 お皿の料理がほとんど減っていない。

「お父さんたちも話してばかりいないで食べてね」

 父から書面上だけの夫へ顔を向けて微笑んだ。


 お風呂から出た私は、まだ二十一時を回ったばかりだがベッドに横になっていた。
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